Mozilla Security Blog 日本語版

Mozilla Security Blog を日本語に翻訳(非公式)

【翻訳】強度の弱い暗号をまだ利用している支払いサービス事業者

この記事は、2016 年 2 月 24 日付で Mozilla Security Blog に投稿された Payment Processors Still Using Weak Crypto(筆者: Richard Barnes)の翻訳です。この翻訳は公式なものではありません。詳しくはこちらをご覧ください。


Web を保護する活動の一環として、Mozilla は Web PKI のガバナンスに参加しています。Web PKI とは、ブラウザが Web サイトを認証できるようにするセキュリティ証明書の仕組みです。Mozilla他のブラウザや Web におけるステークホルダー とともに、証明書の発行手続に関する 標準 に同意します。これから私たちはこの標準を適用し、加えて Mozilla 独自のポリシー も追加します。このポリシーは Firefox が信頼する「ルート」から(直接・間接にかかわらず)発行された証明書すべてに適用されます。

パブリックなインターネット上で支払情報を交換する支払いサービス事業者の中には、サーバと支払端末の間に安全な通信路を確保するために Web PKI 証明書(Firefox の信頼するルートまでチェインがつながっている証明書など)を利用していることがあり、これまで私たちはこのような事業者を紹介してきました。残念ながら、ブラウザ以外の Web PKI ユーザの中には、Web の獲得したセキュリティの向上に追いつけていないものがあります。(証明書の完全性を確認するために用いる)SHA-1 ハッシュアルゴリズムは、Web PKI における利用を廃止することが宣言されましたが、そのような事業者はデバイスを更新できておらず、代替の SHA-2 がサポートされていません。なお、SHA-1 の利用期限は昨年に決定されたものです。この結果、支払サービスに関係する多くのデバイスは、サービスを運用させるために SHA-1 の証明書をサーバに要求し続けています。

特に Worldpay PLC の場合、自身が利用する認証局Symantec を通じて、限られた数の SHA-1 証明書を発行する権限の認可を Mozilla に要請しました。この証明書は多くの古いデバイスをサポートするために必要ですが、Mozilla の同意する標準に違反しています。また、この要請があったのは、認可を必要とする日まで 2 週間を切っているタイミングでした。dev.security.policy のメーリングリストで議論 を重ねた結果、これらのデバイスを利用するユーザの混乱を防ぐため、証明書の発行を例外的に 許可 するよう決定しました。ただし、SHA-1 証明書の発行に完全な透明性を確保し、SHA-2 への移行を目的としていることを条件としました。

この認可により、Worldpay のデバイスを長く運用させるため SHA-1 証明書が Symantec から発行できるようになり、Mozilla はその証明書発行を欠陥と扱わなくなります。この決定は Mozilla のルートプログラムのみに影響を与えるため、他のルートプログラムでは誤った証明書発行と扱われる可能性があります。

Web PKI を利用するしないにかかわらず、Worldpay の他にも同じく SHA-1 を必要とし続ける支払いサービス事業者がいることは把握しています。こういった団体が強度の弱い時代遅れのセキュリティ技術を利用することで、一般市民のデータがリスクにさらされてしまうのは残念でなりません。Web PKISHA-1 を必要とし続ける団体には、可能な限り状況が改善されるよう働きかけを行い、SHA-2 への移行策をできるだけ詳しく提供していきます。